傾いた垂直性―Pusher現象の評価と治療の考え方

編集
:網本 和
ページ数
:320頁
判型
:A5判 2色
ISBN
:978-4-908933-05-9
定価
:4,070円(本体3,700円+税)
発行年
:2017年4月


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内容

 Pusher現象の謎と新しい治療概念の扉が、いまここに開く!!

 1985年、Daviesの著書「Steps to Follow」においてPusher現象という概念が登場し、ときは同じく網本らもPusher現象と垂直性の謎に取り組んでいた。あれから30年余が過ぎ、ときは移りリハビリテーションにおいて耳目を集めている。これまで、半側空間無視の関連症の一つであったが、現在は独立した徴候として捉えられるようになった。しかし、臨床的には脳血管障害における阻害因子と知られているにもかかわらず、その病態、経過、責任病巣、発生メカニズム等については、まだまだ十分に明らかでなく仮説的検証が端緒についたばかりである。

 本書は、Pusher現象と関連徴候について臨床評価、実験方法、メカニズム、治療に焦点を絞った世界的にも類をみない本邦初の書籍化である。ここでの内容は、多くの医療関係者に緻密なデータに基づいた知見、およびメカニズムの解明、効果的な治療方法に一筋の光を必ずもたらすであろう。最先端の医療で活躍する筆者たちが語る、この分野の発展と寄与を肌で感じてほしい。

目次

第Ⅰ章 序論―傾いた垂直性  網本 和
  • ◆はじめに
  • ◆健常者を対象とした垂直性研究
  • ◆脳損傷例を対象とした垂直性の研究
第Ⅱ章 Pusher現象の臨床像
第1節 Pusher現象の臨床特性  宮本真明
  • ◆臨床症状
  •  ・Pusher現象とは
  •  ・Pusher症候群からPusher現象へ
  •  ・他の姿勢障害とは異なるPusher現象の特異的な症状
  •  ・身体傾斜の方向性に関して
  • ◆発生頻度
  •  ・急性期における発生頻度
  •  ・回復期における発生頻度
  •  ・わが国での発生頻度に関する大規模調査
  •  ・Pusher現象の判断基準に関して
  • ◆経過予後
  •  ・Pusher現象の経過
  •  ・Pusher現象を呈した症例におけるADLの回復経過
  • ◆Loss of base of support
  •  ・身体重心と圧中心における関係性の破綻
  •  ・脳血管障害例の姿勢制御における代償的適応過程
  •  ・Pusher現象例における姿勢制御
第2節 Pusherの病巣分析  藤野雄次
  • ◆はじめに
  •  ・Pusher現象の病巣を読み解くポイント
  • ◆Pusher現象の責任病巣
  • ◆白質の重要性
  •  ・方法
  •  ・結果
  •  ・考察
  • ◆まとめ
第3節 Pusher現象の臨床評価  沼尾 拓
  • ◆はじめに
  • ◆網本らによるPusher評価チャート
  • ◆Scale for Contraversive Pushing(SCP)
  •  ・カットオフ値
  •  ・信頼性と妥当性
  •  ・Modified Scale for Contraversive Pushing(M‒SCP)
  • ◆Burke Lateropulsion Scale(BLS)
  •  ・カットオフ値
  •  ・信頼性と妥当性
  • ◆側方突進とその他の徴候との関係
  •  ・傾斜現象(listing phenomenon)
  •  ・側方突進(lateropulsion)
  •  ・視床性失立症
  • ◆それぞれの評価表の長所と短所
  • ◆まとめ
第Ⅲ章 Pusher現象の垂直性
第1節 垂直性の検査法
  • ◆視覚的垂直(SVV)  森下元賀
  •  ・測定環境
  •  ・測定姿勢
  •  ・試行回数
  •  ・視覚垂直の評価方法
  • ◆主観的身体垂直(SPV)  森下元賀
  •  ・測定環境
  •  ・試行回数
  •  ・主観的身体垂直の評価方法
  • ◆主観的徒手的垂直(SHV)  森下元賀
  •  ・測定環境
  •  ・試行回数
  •  ・主観的徒手的垂直(SHV)の評価方法
  • ◆主観的行動性垂直(SBV)  森下元賀
  •  ・測定環境
  •  ・主観的行動性垂直(SBV)の評価方法
  • ◆垂直性検査の具体例  深田和浩
  •  ・主観的視覚垂直(SVV)の測定機器の開発と信頼性の検討
  •  ・主観的身体垂直(SPV)の測定機器の開発と信頼性の検討
  •  ・若年者と高齢者における主観的垂直認知の傾斜方向性と動揺性の比較
  •  ・高齢者と脳血管障害患者における主観的垂直認知の傾斜方向性と動揺性の比較
  •  ・主観的垂直認知の出発点効果についての分析―若年者と高齢者の比較
  •  ・対角平面上の主観的身体垂直(SPV)の測定機器の開発と信頼性の検討
第2節 垂直性の特性  深田和浩
  • ◆Pusher現象の垂直性の特性
  •  ・従来の垂直性の研究
  •  ・われわれの研究―純粋なPusher現象と半側空間無視の合併例
第Ⅳ章 半側空間無視の垂直性  松田雅弘
  • ◆半側空間無視の病態
  • ◆半側空間無視の垂直性は右側へ偏倚しているか
  •  ・半側空間無視症状のない脳血管障害患者の報告
  •  ・半側空間無視症状を呈する脳血管障害患者の報告
第Ⅴ章 パーキンソン病の垂直性  松田雅弘
  • ◆パーキンソン病の病態と神経メカニズム
  • ◆パーキンソン病の姿勢障害
  • ◆パーキンソン病の垂直性障害
  • ◆パーキンソン病の脳神経機構と垂直性
第Ⅵ章 Pusher現象の治療アプローチ
第1節 姿勢・基本動作障害に対する治療アプローチ  万治淳史
  • ◆基本的方針
  • ◆座位
  •  ・Pusher患者における座位の問題点
  •  ・座位保持が困難な症例に対して
  •  ・動的な座位保持の獲得を目指して
  •  ・日常生活における姿勢の安定を目指して
  • ◆移乗(起立・回転・着座)
  •  ・Pusher患者における移乗動作の問題点
  •  ・動作相の特性に合わせた練習の工夫
  •  ・動作介助の環境設定や方法の工夫
  • ◆立位
  •  ・Pusher患者における立位の問題点
  •  ・静的立位保持の安定
  •  ・動的立位バランスの獲得に向けて
  • ◆歩行
  •  ・Pusher患者における歩行の問題
  •  ・歩行練習の工夫
第2節 腹臥位療法  藤野雄次
  • ◆はじめに
  • ◆Pusher現象に対する腹臥位療法
  •  ・研究デザインと対象
  •  ・使用機器
  •  ・治療方法
  •  ・アウトカムの評価
  •  ・腹臥位療法の結果
  •  ・Pusher現象に対する治療効果の比較
  • ◆腹臥位療法の注意点
  • ◆腹臥位への誘導方法
  • ◆腹臥位療法の適応
  • ◆なぜ,腹臥位によってPusher現象が改善するのか
  • ◆まとめ
第3節 外的刺激  廣澤全紀
  • ◆はじめに
  • ◆アウベルト効果(Aubert effect)
  • ◆筋腱振動刺激
  • ◆経皮的末梢神経電気刺激(TENS)
  • ◆直流前庭電気刺激(GVS)
  • ◆今後の展望
第Ⅶ章 理学療法の実際―症例提示
第1節 急性期①―純粋例  渡辺 学
  • ◆はじめに
  • ◆症例
  • ◆画像所見
  • ◆事前情報から予測される障害
  •  ・予測される障害
  •  ・確認すべき現象
  • ◆初回における理学療法評価
  •  ・統合と解釈
  •  ・治療方針
  • ◆Pusher現象に関する詳細な検査
  • ◆Pusher現象に対する治療経過
  •  ・Pusher現象に対する治療方針
  •  ・Pusher現象に対する治療経過―視覚的フィードバックを利用した姿勢矯正
  • ◆退院時における理学療法評価
  • ◆考察
第2節 急性期②―半側空間無視合併例  渡辺 学
  • ◆はじめに
  • ◆症例
  • ◆画像所見
  • ◆事前情報から予測される障害
  •  ・予測される障害
  •  ・確認すべき現象
  • ◆初回における理学療法評価
  •  ・統合と解釈
  •  ・治療方針
  • ◆Pusher現象に関する詳細な検査
  • ◆Pusher現象に対する治療経過
  •  ・Pusher現象に対する治療方針
  •  ・Pusher現象に対する治療経過
  •  ・半側空間無視と全般性注意障害に対する治療
  • ◆退院時における理学療法評価
  • ◆考察
第3節 回復期①―純粋例  中村 学
  • ◆はじめに
  • ◆症例提示
  • ◆介入前の理学療法評価
  • ◆神経心理学的検査
  • ◆初期評価時の垂直認知能力とその解釈
  • ◆研究デザイン
  • ◆結果
  • ◆介入後とその後の理学療法評価
  • ◆神経心理学的検査
  • ◆考察
  •  ・本症例の特徴について(先行研究と比較して)
  •  ・なぜSPV‒EOが障害され,SPVが測定不可だったのか
  •  ・課題ごとに効果の差はみられたのか
  • ◆おわりに
第4節 回復期②―半側空間無視合併例  中村 学
  • ◆はじめに
  • ◆症例提示
  • ◆介入前の理学療法評価
  • ◆神経心理学的検査
  • ◆初期評価時の垂直認知能力
  • ◆研究デザイン
  • ◆結果
  • ◆介入後とその後の理学療法評価
  • ◆神経心理学的検査
  • ◆考察
  •  ・なぜ麻痺側から能動的に修正できたのか
  •  ・課題ごとの効果に差はみられたのか
  • ◆おわりに
索 引

書籍