言語聴覚士リスク管理ハンドブック―養成校では学べない臨床の知恵
- 編集:
- :山本 徹・清水宗平
- ページ数
- :424頁
- 判型
- :A5判 2色
- ISBN
- :978-4-908933-08-0
- 定価
- :4,620円(本体4,200円+税)
- 発行年
- :2017年6月
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内容
刻々と変わる臨床現場のリスクに対応せよ!!
言語聴覚士法が施行されて約20年の歳月が過ぎた。その間、3万人の言語聴覚士が生まれ、その多くは病院でキャリアをスタートしたことだろう。病院では患者と家族のニーズを上手く捉え人生の再構築に向けて、医療的リスクを回避しながら適切な評価とアプローチ、および他職種や支援者等ともスムーズに情報を共有してゴールを目指さなければならない。特にこれらは、現場の知として数年かけて身に付けていく技術であるが、形式知にまとめられたものがなく、昨今の課題となっている。
本書では、臨床で遭遇する医療的リスクに加え、評価や訓練実施の際に生じるリスクおよび情報が滞ることで引き起こるリスクに対し、最も有効な対処と手段を掲載。さらに病棟への連絡やカンファレンスでの発言の仕方、報告書の書き方など、臨床ですぐに活かせるよう具体的なコツなどを提示。真に役立つ今の臨床を生き抜く知恵がちりばめられている。悩める初学者や臨床家に、必ず解決策を与える臨床のバイブルである。
目次
第1章 急性期におけるリスクと情報の管理
第1節 疾患の理解と医療的リスク
- 1.脳血管疾患
- 1.1 脳梗塞
- 1.2 脳出血
- 1.3 くも膜下出血
- 1.4 その他(脳室ドレナージ)
- 1.5 脳血管疾患におけるST領域で特徴的な臨床症状とリスク管理
- 1.6 脳血管疾患に起因する病棟でよく起こる出来事
- 2.脳外傷・脳炎・脳腫瘍
- 2.1 脳外傷
- 2.2 脳 炎
- 2.3 脳腫瘍
- 3.頭頸部がん
- 3.1 病 態
- 3.2 治療法
- 3.3 頭頸部がんに起因する病態としてのリスク
- 3.4 頭頸部がんにおけるST領域に特徴的な臨床症状とリスク管理
- 4.脊髄損傷
- 4.1 病 態
- 4.2 原 因
- 4.3 特 徴
- 4.4 治療法
- 4.5 脊髄損傷に起因する病態としてのリスク
- 4.6 脊髄損傷におけるST領域に特徴的な臨床症状とリスク管理
- 5.パーキンソン病・パーキンソン関連疾患
- 5.1 パーキンソン病
- 5.2 レヴィー小体型認知症
- 5.3 進行性核上性麻痺
- 5.4 大脳皮質基底核変性症
- 5.5 多系統萎縮症
- 5.6 脳血管パーキンソニズム
- 5.7 薬剤性パーキンソニズム
- 6.多系統萎縮症・脊髄小脳変性症
- 6.1 多系統萎縮症
- 6.2 脊髄小脳変性症
- 6.3 多系統萎縮性症・脊髄小脳変性症に起因する病態としてのリスク
- 6.4 多系統萎縮性症・脊髄小脳変性症におけるST領域に特徴的な臨床症状とリスク管理
- 7.筋萎縮性側索硬化症
- 7.1 原 因
- 7.2 病 態
- 7.3 症 状
- 7.4 評価・治療
- 7.5 筋萎縮性側索硬化症に起因する病態としてのリスク
- 7.6 筋萎縮性側索硬化症におけるST領域に特徴的な臨床症状とリスク管理
- 8.高齢者の疾患
- 8.1 肺 炎
- 8.2 心不全
- 8.3 腎不全
- 8.4 脱水・低栄養
- 9.認知症
- 9.1 病態・原因
- 9.2 認知症に起因する病態としてのリスク
- 9.3 認知症におけるST領域に特徴的な臨床症状とリスク管理
第2節 情報収集の方法
- 1.病院での多職種から聞きとる項目(医学的・社会的)
- 1.1 医 師
- 1.2 看護師
- 1.3 理学療法士
- 1.4 作業療法士
- 1.5 医療ソーシャルワーカー
- 1.6 管理栄養士
- 1.7 薬剤師
- 1.8 歯科医師・歯科衛生士
- 2.本人・家族から聞きとること
- 2.1 リハビリテーションに関する説明と同意
- 2.2 リハビリテーション開始時の情報収集
- 2.3 情報収集の工夫
- 2.4 方向性について
第3節 コミュニケーション状態の評価
- 1.意識状態・聴力の評価とリスク管理
- 1.1 意識状態の評価項目と実施バッテリー
- 1.2 聴力の評価項目と実施バッテリー
- 1.3 意識状態・聴力における評価実施の際のリスク管理
- 2.認知機能の評価とリスク管理
- 2.1 認知機能・認知症の評価項目と実施バッテリー
- 2.2 失語症の評価項目と実施バッテリー
- 2.3 失行症の評価項目と実施バッテリー
- 2.4 失認症・視覚認知の評価項目と実施バッテリー
- 2.5 注意障害の評価項目と実施バッテリー
- 2.6 半側空間無視の評価項目と実施バッテリー
- 2.7 記憶障害の評価項目と実施バッテリー
- 2.8 遂行機能障害・前頭葉機能障害の評価項目と実施バッテリー
- 2.9 意欲・アパシー(apaathy)の評価項目と実施バッテリー
- 2.10 社会的行動障害の評価項目と実施バッテリー
- 2.11 認知機能評価における実施方法と実施場所
- 2.12 障害別の評価におけるリスク管理
第4節 摂食嚥下状態の評価・訓練・開始基準・連携
- 1.摂食嚥下状態の評価
- 1.1 意識状態
- 1.2 せん妄状態
- 1.3 うつ状態
- 1.4 口腔状態
- 1.5 栄養状態
- 1.6 嚥下状態
- 1.7 姿勢と日常生活動作
- 2.評価・検査・訓練実施の際のリスク管理
- 2.1 摂食時のリスク管理のポイント
- 2.2 呼吸状態
- 2.3 循環動態
- 2.4 腹部・消化器の症状
- 2.5 薬剤性嚥下障害
- 3.摂食の開始基準について
- 3.1 服薬の可否
- 3.2 摂食訓練の開始基準と実際
- 4.摂食開始にあたっての連携と報告の仕方
- 4.1 多職種連携の必要性
- 4.2 患者対応により変化する報告
- 4.3 カンファレンスの活用
- 4.4 医 師
- 4.5 看護師
- 4.6 理学療法士
- 4.7 作業療法士
- 4.8 医療ソーシャルワーカー
- 4.9 管理栄養士
- 4.10 薬剤師
- 5.摂食開始にあたっての患者・家族の意向の捉え方
- 5.1 インフォームド・コンセント
- 5.2 栄養・摂食嚥下機能の問題
- 5.3 栄養改善を優先するか、摂食嚥下障害に対しての対応を優先するか
- 5.4 方針・方向性を踏まえた説明と同意
- 5.5 患者背景からの目標設定
- 5.6 胃瘻に対しての理解
- 5.7 胃瘻の選択によって生じる予後問題
- 5.8 健康行動を引き出す説明と治療の選択・同意
- 5.9 お楽しみの嚥下・食事
第5節 収集した情報の統合と伝達
- 1.リハビリテーション総合実施計画書の書き方と読み方
- 1.1 リハビリテーション総合実施計画書とは
- 1.2 情報の統合の場としてのリハ総合実施計画書
- 1.3 急性期におけるリハ総合実施計画書の活用上の留意点
- 2.予後予測の伝え方
- 2.1 予後予測の重要性
- 2.2 多職種への予後予測の伝え方
第6節 訓練実施におけるリスク管理と情報共有
- 1.リハビリテーションで留意すべきリスクとその管理
- 1.1 脳卒中の増悪・再発
- 1.2 深部静脈血栓症・肺塞栓症
- 1.3 循環器系の問題
- 1.4 尿路感染症
- 1.5 消化管出血
- 1.6 廃用症候群
- 1.7 低栄養
- 1.8 感染症対策
- 2.認知・コミュニケーション訓練実施におけるリスク管理
- 2.1 訓練目的の明確化
- 2.2 医療的リスクの明確化
- 2.3 訓練環境の確保
- 3.摂食嚥下訓練実施におけるリスク管理
- 3.1 訓練目的の明確化
- 3.2 医療的リスクの明確化
- 3.3 訓練環境の確保
- 4.医療機関内における評価・訓練内容の伝え方
- 4.1 診療録の記載
- 4.2 カンファレンス時の伝え方・聞き方
- 4.3 情報共有のための掲示と個人情報保護
第7節 評価・訓練内容のまとめ方と伝え方
- 1.医療関係者に向けたサマリーの書き方
- 2.家族に向けたサマリーの書き方
第2章 回復期(入院時)におけるリスクと情報の管理
第1節 情報収集の方法
- 1.回復期リハビリテーション病棟とは
- 2.回復期リハビリテーション病棟の機能
- 3.入院前の情報収集・共有
- 3.1 医療ソーシャルワーカー
- 3.2 入院患者情報シート
- 3.3 理学療法士・作業療法士
- 4.入院時の情報収集
- 4.1 医 師
- 4.2 退院時サマリー
- 4.3 看護師
- 4.4 理学療法士
- 4.5 作業療法士
- 4.6 管理栄養士
- 4.7 薬剤師
- 4.8 患者本人・キーパーソン
- 4.9 介護支援専門員(ケアマネジャー)
- 5.入院後の情報収集・共有
- 5.1 初回カンファレンスの準備
- 5.2 初回カンファレンス
第2節 コミュニケーション状態の評価
- 1.回復期における言語聴覚療法の流れ
- 2.評価に入る前に
- 3.観察や評価尺度を用いた機能別評価
- 3.1 病室での機能評価
- 3.2 言語聴覚療法室での評価
- 3.3 言語聴覚療法室での評価が困難な場合
第3節 摂食嚥下・栄養状態の評価
- 1.摂食嚥下障害への介入
- 2.評価項目
- 2.1 意識状態
- 2.2 口腔状態
- 2.3 栄養状態
- 2.4 嚥下状態
- 2.5 姿勢・ADL
- 3.評価・検査実施の際のリスク管理
- 3.1 血液データから読みとれること
- 3.2 嚥下造影検査(VF)への関わり方
- 3.3 嚥下内視鏡検査(VE)への関わり方
第4節 摂食の開始
- 1.摂食の開始に向けて
- 1.1 サマリーの確認
- 1.2 予後予測に関する先行研究
- 1.3 病棟のマンパワー
- 2.摂食開始にあたっての連携と報告の仕方
- 2.1 医 師
- 2.2 看護師
- 2.3 介護士
- 2.4 理学療法士・作業療法士
- 2.5 医療ソーシャルワーカー
- 2.6 管理栄養士
- 2.7 薬剤師
- 3.摂食開始にあたっての患者・家族の意向の捉え方
- 3.1 予後予測の確認
第5節 収集した情報のまとめ方と伝え方
- 1.リハビリテーション総合実施計画書の書き方と読み方
- 1.1 ニーズの捉え方
- 1.2 リハ総合実施計画書の書き方
- 2.リハビリカンファレンスでの予後予測などの伝え方
- 2.1 チームアプローチ
- 2.2 リハビリテーションカンファレンス
- 3.リハビリテーション総合実施計画書の見直し
- 4.地域連携クリティカルパス
- 4.1 地域連携クリティカルパスとは
- 4.2 地域連携クリティカルパスの効果
- 4.3 地域連携クリティカルパスで使用されている評価
- 4.4 脳卒中パスに用いられる脳卒中スケール
第6節 訓練実施の際のリスク管理
- 1.認知・コミュニケーション訓練実施の際のリスク管理
- 1.1 転倒に関するリスク管理
- 1.2 心理的負担に関するリスク管理
- 1.3 情報に関するリスク管理―個人情報の取り扱い
- 2.摂食嚥下訓練実施の際のリスク管理
第3章 回復期(退院時)におけるリスクと情報の管理
第1節 退院前訪問指導
- 1.退院前訪問指導とは
- 2.キーパーソンと専門職との情報共有
- 2.1 キーパーソン
- 2.2 ケアマネジャー
- 2.3 医療ソーシャルワーカー
- 2.4 理学療法士
- 2.5 作業療法士
- 2.6 看護師
- 2.7 福祉用具専門員
- 3.退院前訪問指導時に行う内容
- 3.1 問題点の抽出(ニーズ把握)
- 3.2 住環境整備の検討
- 4.退院前訪問指導後の対応
- 4.1 住環境整備方針の決定
- 4.2 リハビリテーションプログラムの見直し
- 5.退院前訪問指導におけるSTの役割
- 5.1 摂食嚥下障害への対応
- 5.2 高次脳機能障害への対応
- 5.3 コミュニケーション障害と環境調整(テクノロジーの利用)
第2節 退院前の再評価とカンファレンス
- 1.退院前の再評価と予後予測
- 1.1 高次脳機能障害の長期経過
- 1.2 摂食嚥下障害の発症率
- 1.3 病棟内ADLと自宅でのADL
- 1.4 再評価のまとめ
- 2.地域資源の理解
- 2.1 病院チームと在宅チーム
- 2.2 縦の連携と横の連携
- 2.3 地域資源
- 2.4 制 度
- 3.退院前カンファレンスで話すことと根回し
- 3.1 退院前カンファレンスに参加する職種
- 3.2 退院前カンファレンス前に聞くこと
- 3.3 退院前カンファレンスで伝えること
- 4.サマリーの書き方
- 4.1 患者本人・家族に向けて
- 4.2 ヘルパーなどの支援者に向けて
- 4.3 医療関係者に向けて
第3節 退院設定
- 1.退院設定の考え方
- 2.コミュニケーション障害に関わる退院設定
- 2.1 キーパーソンは誰か
- 2.2 認知コミュニケーション障害のフォローアップは誰が行うか
- 2.3 活動先はどこか
- 2.4 活動先のコミュニケーションパートナーは誰か
- 2.5 ピアサポートは、どこで受けられるか
- 3.摂食嚥下障害の退院設定
- 3.1 在宅における摂食嚥下機能の支援(5W1H)