老年健康科学~運動促進・知的活動・社会参加のススメ

著者
:牧迫飛雄馬
ページ数
:208頁
判型
:A5判
ISBN
:978-4-908933-22-6
定価
:3,740円(本体3,400円+税)
発行年
:2019年8月


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内容

 高齢化社会について、真剣に考えてみませんか?

 健康は第一の富である

  この言葉は、約200年前の有名な思想家が述べたようであるが、超高齢化社会の日本にとって、未来を予見した先人からの貴重なメッセージと受け取られる。そもそも『健康』とは、どのような状態であろうか。WHOでは「健康とは、身体的、精神的及び社会的に完全に良好な状態であり、単に疾病又は病弱の存在しないことではない」と定義している。しかし、65歳以上の割合が3人に1人に近づいた我が国おいて、健康を取り巻く情勢は非常に厳しく、全国民が理解しているが、その解決策を見い出せないままでいる。

 本書は、21世紀における我が国の指針から導き出す、健康長寿の創り方を3本の矢で示す。まず、1本目は身体的活動(運動)、2本目は知的活動(認知)、3本目は社会的活動(参加)という、3本の促進が重要である。この3本は、どれか1本でも折れては実現できない。ここには、具体的な策と実成果が詰まっており、その実現が、いま始まったのだ。本書を一読せずにしては、次の時代が読めず、さらに3本の矢が的を射た時、新しい日本の長寿社会の扉が開くことを断言する。

目次

序章 老年期における健康と長寿とは
 1.健康と科学
 2.高齢者の定義
 3.健康長寿の延伸
第Ⅰ章 運動の柱〜身体的活動の促進〜
 1.老年期における運動機能
 2.運動機能低下および身体活動低下の弊害
  •  ・運動機能低下と転倒
  •  ・運動機能低下および身体活動低下と死亡リスクの増大
  •  ・身体活動低下と疾患発症リスク
  •  ・運動機能低下および身体活動低下と要介護の発生
  •  ・運動機能低下および身体活動低下と認知症
  •  ・高齢者における身体活動と脳機能
 3.身体的フレイル
  •  ・フレイルの概念
  •  ・身体的フレイルの評価
  •  ・身体的フレイルの弊害
  •  ・健康長寿におけるわが国でのフレイルの位置づけ
  •  ・フレイルの可逆性
 4.サルコペニアとダイナぺニア
  •  ・筋力・筋量の加齢変化
  •  ・サルコペニアとは
  •  ・ダイナペニアとは
 5.ロコモティブシンドローム
  •  ・ロコモティブシンドロームとは
  •  ・ロコモティブシンドロームの評価と疫学
 6.身体活動・運動の効用
  •  ・身体活動・運動による身体機能への効果
  •  ・身体活動・運動による精神・心理機能への効果
  •  ・身体活動・運動による認知機能・脳機能への効果
 7.身体活動促進の戦略
  •  ・転倒予防のための運動介入戦略および身体活動の促進
  •  ・認知機能低下予防のための運動介入戦略および身体活動の促進
第Ⅱ章 認知の柱〜知的活動の促進〜
1.老年期における認知機能
  •  ・加齢によるもの忘れと認知症による記憶障害
  •  ・結晶性知能と流動性知能
  •  ・認知機能の変化
  •  ・認知機能の評価指標
  •  ・記憶機能の評価
  •  ・注意および遂行(実行)機能の評価
  •  ・言語機能の評価
  •  ・視空間認知の評価
  •  ・認知機能低下の危険因子と保護因子
 2.認知機能の低下による弊害
  •  ・IADLおよびADLへの影響
  •  ・認知機能の低下および認知症による予後
  •  ・転倒への影響
 3.認知的フレイル
  •  ・認知的フレイルの定義
  •  ・認知的フレイルの有病率
  •  ・認知的フレイルの弊害
 4.軽度認知障害(MCI)
  •  ・軽度認知障害の定義
  •  ・軽度認知障害のサブタイプ
  •  ・軽度認知障害から認知症への移行,健常への回復
 5.認知機能の衰えの自覚
  •  ・主観的な記憶低下(SMC)
  •  ・Motoric Cognitive Risk Syndrome(MCR)
 6.知的活動の効用
  •  ・知的活動による認知機能の効果
  •  ・認知的な介入による移動機能の改善および転倒予防への効果
 7.知的活動を促進する戦略
  •  ・日常生活での知的活動の促進
第Ⅲ章 参加の柱〜社会的活動の促進〜
1.老年期における社会参加の意義
  •  ・老年期における社会参加の現状
  •  ・社会環境と生活行動
2.社会的フレイル
  •  ・フレイルの社会的側面の評価
  •  ・社会的フレイルの弊害
3.ソーシャル・ネットワーク
4.ソーシャル・キャピタル
  •  ・ソーシャル・キャピタルと心身機能
5.社会的活動への参加の効用
  •  ・抑うつや認知症の予防
6.社会的活動促進の戦略
Column
【基礎研究からのメッセージ】
  •  ・発症前の運動〜身体活動は脳の保護的な機能向上にも有効
  •  ・αアクチニン(筋力生成および骨格筋量の減少に関与する遺伝子)
  •  ・歩数計の保有で1日2,000歩の上昇
  •  ・血液バイオマーカー
  •  ・環境とアミロイドβ(豊かな環境は脳の健康に有益)
【現場からのメッセージ】
  •  ・地域での自主活動の醍醐味
  •  ・地域での自主的な活動を通じて実感すること(飽きることなく継続するための工夫)
  •  ・病院を退職した後の充実人生
【高齢者へのアプローチのコツ】
  •  ・自主的な活動の継続
  •  ・興味のある活動
  •  ・内的報酬と外的報酬

書籍