内容
身体運動中の皮膚は、さまざまな部位で皺が観察され、または伸張されている。その運動時に皮膚が動く方向へ皮膚を他動的に誘導すれば、関節可動域が改善するという事実がある。また、臨床家の間では手術後の瘢痕形成は関節運動に影響することはよく知られているが、その瘢痕の影響が身体の一部にとどまっていないと多くが感じている。このような皮膚の挙動特性について疑問を解く書物はみられない。しかしながら、その動きには一定の法則があるようだ。
本書は、皮膚の動きについて科学的な検証と長年の臨床経験をもとに、皮膚の特徴から原則までを明確に解説し、各部位への可動域アプローチの方法および症例を交えて動作障害に対する治療技術を具体的に理解しやすくまとめた類のない書である。ひとの身体に携わるすべての職種の方に一読を勧める。
目次
第I部 皮膚テーピングの理論
- 1. 皮膚の役割と構造
- (1) 皮膚の役割
- (2) 皮膚の構造
- (3) 皮溝、皮丘
- (4) 緊張線 (Skin Tension Line)
- 2. 皮膚の運動時の挙動特性
- 3. 皮膚運動の法則性
- 4. 皮膚テーピングの原則
- (1) 皺の誘導の原則
- (2) 身体表面突出部の誘導の原則
- (3) 回旋時緊張線の誘導の原則
- (4) 筋の促通と抑制の原則
- 5. 皮膚テーピングの目的
- (1) 関節可動域の拡大および制限
- (2) 筋活動の促通および抑制
- (3) 姿勢制御
- (4) 歩行などの動作制御
- (5) 関節の安定化
- (6) 疼痛緩和
- 6. 皮膚テーピングの施行方法
- (1) テープの貼付前に配慮すべき事項
- (2) テープの貼付方法
- (3) 実際の施行方法
- 7. テープの種類
- 8. 皮膚テーピングの注意点
第II部 皮膚テピングの実際
第1章 関節可動域拡大および制限テーピング
- 1. 脊柱
- (1) 頸椎
- (2) 胸椎
- (3) 腰椎
- 2. 上肢
- (1) 肩関節
- (2) 胸鎖関節、肩鎖関節
- (3) 肘関節
- (4) 前腕
- (5) 手関節
- 3. 下肢
- (1) 股関節
- (2) 膝関節
- (3) 足関節 (距腿関節)
- (4) 距骨下関節
- (5) 中足趾節関節、趾節間関節
第2章 筋活動促通および抑制テーピング
- 1. 筋活動の促通が必要となる代表的な筋
- (1) 僧帽筋下部線維
- (2) 菱形筋
- (3) 腹横筋
- (4) 股関節屈筋
- (5) 大殿筋
- (6) 中殿筋
- (7) 内側広筋
- (8) ハムストリングス
- (9) 前脛骨筋
- 2. 筋活動の抑制が必要となる代表的な筋
- (1) 大胸筋
- (2) 小胸筋
- (3) 上腕二頭筋
- (4) 大腿筋膜張筋
第3章 姿勢制御テーピング
- 1. 脊柱の姿勢制御
- (1) 頭位後方誘導
- (2) 頸椎屈曲誘導
- (3) 胸椎伸展誘導
- (4) 腰椎屈曲誘導
- 2. 骨盤の姿勢制御
- (1) 骨盤前傾誘導
- (2) 骨盤後傾誘導
- (3) 骨盤前方移動誘導
- (4) 骨盤後方移動誘導
- (5) 骨盤側方移動誘導
- (6) 骨盤回旋誘導
- (7) 足圧中心安定化
第4章 歩行制御テーピング
- 1. 皮膚誘導による歩行制御の考え方
- 2. 立脚初期の制御
- (1) 踵接地から荷重応答期の時間的要素の操作
- (2) 距骨下関節回外・回内の操作
- (3) 骨盤回旋運動の操作
- 3. 立脚中期の制御
- (1) 立脚中期の時間的要素の操作
- (2) 立脚中期から立脚後期への時間的要素の操作
- (3) 骨盤挙上運動の操作
- 4. 立脚後期の制御
- (1) 立脚後期の時間的要素の操作
- (2) 前足部回内・回外の操作
第III部 疾患別テーピング
- 1. 腰椎椎間板ヘルニア
- 2. 腰椎分離症
- 3. 肩関節周囲炎
- 4. 胸郭出口症候群
- 5. 上腕骨外側上顆炎
- 6. 変形性股関節症
- 7. 変形性膝関節症
- 8. 腸脛靭帯炎
- 9. 鵞足炎
- 10. 膝蓋靭帯炎
- 11. アキレス腱炎