2015年、我が国の理学療法士誕生から半世紀を迎えたが、これからがこの業界における正念場になるであろう。さまざまな形で技術導入を果たしてきた時代から、今後はわが国独自の発展も当然期待される。しかし、理学療法の将来を憂う声は大きく、将来の医療制度は？　雇用は？　職域は？　などは、すべて自分自身の不安である。
　しかし、この仕事のすばらしさを端的に示すなら、他者への貢献が直接受け取られる点ではないかと思う。「いつか誰かのために有益な」仕事は尊いが、治療直後に生まれる患者の笑顔ほど、自分の原動力になるものはないといえる。
一方で、未知の領域が多いにもかかわらず生活面への対応など「現状打破」が要求されている。「わかっていないがなんとかする」能力も必要とされるのである。またエビデンスを要求されるなかでは、その証拠を求めるために能力も時間も相当費やさなければならない。これを満たすには、「創造性」というパワーが求められ、いまだ不十分な理学療法を前進させる原動力となると考える。
　この「他者への貢献」および「創造性」をキーワードとし、一味違う中身を執筆者にも読者にも要求することを課したいと考え、その中で生まれたが「エキスパート理学療法」シリーズである。将来エビデンスとなりうる力感ある創造性を刺激にしていただきたい。

シリーズ監修者を代表として
福井　勉